毎日テニス選手権大会、通称毎トーに今年も出た。人生2度目の挑戦だ。
2回戦の第7シードを含め3回勝ち、準々決勝は6/2(木)9:00からとなった。会場は有明テニスの森の屋外オムニコートだ。
相手は第3シードで4月の東京オープンでファイナルセットの末やられた選手。リベンジに燃えないわけがない。
がしかし、この日は仕事の調整がどうしてもつかない。11:00から顧客とのオンラインミーティング、14:00からは来客対応が入っていた。
実はこの大会は雨の影響で土日がほぼ両日中止となりスケジュールが大きく後ろにずれ込んでいたのだ。
どうすることもできないか…。
いや、待て。その日の9:00は雨予報ではないか!再び延期になればワンチャンある。翌日の金曜日なら仕事の調整はつけられる。
当日は集合することになるだろうから現地に行って受付をする必要がある。その後、すぐに職場に戻れば仕事に間に合う。延期になれば…
当日。
予報通り夜から降り続ける雨の中、テニスの用意は一切せず、仕事の格好のまま有明まで足を運んだ。
有明も普通に雨が降っておりコートには水たまりもできている。よし、予定通りだ。午後には止む予報なので午後からの人はやるかもしれないが、午前の人は延期になるはず。
大会の受付を済ませた。さぁ、すぐ仕事に向かわねば。
がしかし、ここで想定外のことが起きた。
受付係「はい、宮田さんですね。2番コートになります。相手はまだいらしてないので(試合で使う)ボールをお渡ししますね。お持ちになってお待ちください」
えーッ!水たまりになってるのにやる想定の対応?なぜ?ボールを渡されてしまっては職場に向かえないではないか。
しかしここで「なんで?」と話をしてしまうと「あなたは棄権ということですね?」となってしまうため抵抗できない。一度受け取ってからどうするか考えよう。
その受付は有明のインドアコート施設内にある。そこでは練習前の入念な準備運動をするプロ選手たちがいた。それを眺めながら考える。
遅くてもあと30分以内に仕事に向かわねば。オフィスで対応することを予定していたオンラインミーティングに間に合わない。まずはこのボールを相手に渡さなくては。
しかし、相手はまだ来ていない。どうする?!
もしかしたら相手が来ずに不戦勝となる可能性もゼロではないが。
そんなことを考えながら焦りが募る。と同時に、有明の施設内でコソコソしている自分がいる。
というのも、自分の格好は場違いだったのだ。有明はテニスの聖地。テニスの格好をした人しかいないのに、自分だけ私服だったのだ。
時間だけが過ぎていく。まずい、もうオフィスに戻っていてはオンラインミーティングには間に合わない。どこかで場所を見つけて外から参加しよう。
そう決めた頃、同じく勝ち上がっている仲間が会場に現れた。相手はまだ来ていない。そうだ、ボールは彼に預けて相手が来たら渡してもらおう。彼は快く引き受けてくれた。
その直後、運営から次の案内があった。
「雨はこのあと止む予報なので、9:00から予定していた試合は12:00からとします」
えー!そのパターンがあったか!
相手が来なければ自分が不戦勝だが、来たら相手が不戦勝となることが確定した。
仕方ない、気持ちを仕事に切り替えなくては。次にやらないといけないのは、オンラインミーティングのできる場所を探すことだ。
雨の降る有明テニスの森にはほとんど人が出歩いていない。また、施設が新しく、公園内の公共のトイレはとても綺麗だ。多機能トイレも完備されている。
これだ!鍵もコンセントもあるではないか!
そう、11:00からのお客様とのオンラインミーティングは公衆トイレの中から参加することになった。営業職のため顔出しもするが、背景は画像で隠せるから問題ない。
無事、オンラインミーティングを開始できた。
しかし、5分ほどが経った頃、問題が発生した。多機能トイレの電気がセンサー式で人の動きを検知できず消えたのだ。
その瞬間、画面に映る自分が幽霊のような黒い影になった。やば。見られたか?
平静を装い足を後ろに大きく動かして電気をつける。
そして、通信の問題によるフリーズや音声遅延の予防を目的にカメラをオフとさせていただくことにした。
もちろん本当の目的は自分が幽霊になる瞬間を5分おきに見られることがないようにするためだ。
12:00、無事オンラインミーティングを終えることができた。実際のところ、お客様の満足度の高い会となり、このお客様は現在も製品導入検討に前向きだ。
ふぅ。トイレを出ると雨は止んでいた。
遠くから2番コートを眺めると、そこには相手の姿があった。
今年の毎トーはベスト8に終わった。