先日、小田原リーグ2部の試合で、シングルス3番手で出ていた自分が、勝たないといけない試合に負け、4勝5敗でチームも負けるという経験をした。
この5敗の内、自分の対戦以外は相手の方が明らかに実力が上でストレート負けだったが、自分は1セットアップから逆転負けを喫したのだ。
この負けが、愚かだった。
一言でいうと、試合に勝つことを第一に考えることができていなかったということになる。
これは言い訳だ。しかし、個人的にはとても難しいシチュエーションに陥っていた。
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相手は高校2年生で、父親がコートの後ろでカメラを回しながら見ていた。
序盤、本領発揮できずにいる相手は父親に声をかけられ何か言われていた。
しかし、彼のプレーは改善されず、むしろ余計にちぐはぐし始めた。それを感じとり、私はその父親に怒りを覚えた。
「お前のアドバイスがクソなんだよ。
プレーも改善されなければ、子供が自分で考える力まで奪ってるじゃねーか。気づけよ。
親の目を気にしながら生きる人間に育てあげたいのか?子供は親に言われなくても自分で考えられるようになるんだよ。
どうせ日本中にいるバカ親ども同様、『あいつを見てると考えているようには見えない』とかほざくんだろ。
そうじゃねーよ。人間は本当に自分にとって重要なことは考える前に無意識に感じてるんだよ。命の危険を感じたら誰だって考えずに感じて逃げるだろ。防衛本能が働く。それと同じなんだよ。
このままだと試合に負けると感じたお前の息子は必ず試行錯誤する。言語化して考えることができなくても、その策をお前に説明できなくても、試行錯誤するし、今もしてるよ。
そして、お前が何も言わなくても解決策を見出すことができる。
にも関わらず、お前が見当違いのことを言うからプレーがちぐはぐしちまうんだよ。
もちろん、相手との実力差が大きければ解決策を見出せないまま終わることもあるだろうよ。それでも、その試行錯誤が考える力につながるんだよ。
間違った試行錯誤をして遠回りしたり、失敗することもあるよ。それでもその失敗こそが急成長につながるんじゃねーか。
コーチでもない素人のお前が、テニスで真剣勝負もしたことのない素人のお前が言うことなんて、何の足しにもならねーよ。
黙って見てろ。この、バカ親が」
こんな主旨の想いが込み上げ、チェンジコートの直後、私はその父親に半ばキレ気味にこう言っていた。
「お父さん、試合中に声かけない方がいいですよ。それをしてしまうと自分で考える力が育たないんで」
父親は小さく「はい」とだけ答え、その後はそれに従っていた。
それ以降、明らかに相手のちぐはぐが薄れていくのがわかった。先にワンブレイクしてリードしていたがブレイクバックを許すことになる。
「ほらみたことか」
私は父親に対してそんなことを思っていた。そして2ゲーム後、もう一度、父親に言った。
「人はこうやって考えられるんです。たとえ考えていないように見えても、感じてます。危機管理能力で感じて対応します」
そりゃあウザかっただろう。それでも父親は黙って聞いていた。
追いつかれたが、相手がまだ上がりきっていないことはわかっていた。第10ゲームを再度ブレイクし、1stセットは何とか6-4で締めることができた。
しかし、問題はここからだった。
彼の適応能力、戦術の変化に私は驚きながら、とても手を焼いていた。と同時に、彼の「自らの力で問題を解決していく姿」に感動を覚えていた。
「やっぱり。君はお父さんが思っているより余程素晴らしい力を持っているよね」
2ndセットは2-6で一蹴され、勢いそのまま、ファイナルセットのスーパータイブレークも4-10で打ちのめされたのだ。
不思議なことに、悔しい気持ちよりも嬉しい勝ちの方が大きかった。
子供は皆、素晴らしい。
テニスコーチや育児から離れて久方ぶりに、またその瞬間を肌で感じることができたのだ。
最後のスーパータイブレークは相手の応援が盛り上がっていた。その時は気づかなかったが、相手は勝てばチームの勝ちを決めることができたのだ。
試合後、私は彼にこう伝えた。
「素晴らしい適応能力で、2ndセット以降はしっかりとボールを引きつけて打たれちゃいましたね。参りました」
コートから出た彼がチームに歓迎されているのを見て、私はチームが負けたことを理解した。
彼にとっては、人生を変える可能性があると言っても過言ではない、ひとつの重要な成功体験になったはずだ。
失敗体験はもちろん、こういうひとつひとつの小さな成功体験の積み重ねで子供は大きく成長していくのだ。
*
さて、ここまでは彼の人生視点の話だ。ここからはわたしの人生にとってどうだったかを書く。
わたしにとって、ここまでの話はやはり言い訳でしかない。試合後、チームが負けたことに気づき、中途半端な気持ちで勝負にコミットできていなかった自分を責めることになった。
久しぶりの後悔だった。
やはり、テニスの試合の真剣勝負では、何があっても「自分のために」最善を尽くすべきと猛省した。
だからこの負けは、やっぱり愚かだった。