死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

「上手さ」と「強さ」は別という話

これはよく聞く話だ。

 

上手いけど弱い。下手なのに強い。上手いと強いは必ずしも比例しない。

 

サラリーマンをやるかたわら、週一回、テニススクールでアルバイトコーチをしているのだが、そこでもそんな結果が出た。

 

週2クラスだけ担当しているのだが、そのひとつは主に仕事帰りの成人が集まる初中級クラスだ。

 

その初中級クラスには、ふたりのおばさまがいる。いや、失礼かもしれないが、おそらく50才前後だからさすがにおねえさまとは言えない。おばさまだ。

 

そのふたりが、スクール内の初中級と中級に所属する人だけが参加できるダブルスの大会、というよりは試合イベントにペアで参加した。

 

参加数は6ペア12名。6ゲーム先取ノーアドで総当たり。コートは3面。3時間で1ペア5試合という結構贅沢でタフなイベントだ。

 

参加者12名の内、5名くらいが中級クラスだったらしい。

 

そんな中、その初中級おばさまペアが準優勝だったのだ。

 

最後の5試合目が全勝同士の戦いで、若めの中級ペアに惜しくも敗れたようなのだが、そこに対しても善戦していたと現場にいたコーチから聞いている。

 

コーチ「そうです、準優勝でした!2人とも試合慣れしてるようで、とっても安定感がありました!中級ペアには負けてしまいましたが、惜しいところまで行ってました!」

 

本人たちも興奮気味に報告してくれたので充実した3時間だったことがよく伝わってきた。

 

おばさま1「一勝もできなかったなんて報告できないもの、ねぇ!笑」

 

おばさま2「最後は若さに負けたわ。6ゲームやることなんてないのにそれを5試合だもの。最後はカウントも忘れちゃうくらいヘトヘトで。4ゲームにしてほしい!笑」

 

ふたりは試合に普段から出ているわけではない。初めてペアを組んで試合イベントに出ている。もちろん他の5ペアもそれは同じだろう。

 

それなのになぜ、「試合慣れしているよう」だったのか。

 

それは、彼女たちが普段から負けず嫌いで勝つためにテニスをしているからだ。

 

私の初中級クラスは球出し練習がほぼない。打ち方も教えない。ずっと勝負を意識したラリー練習だ。一面に8人でも球出し練習をしない。最後のゲームの時間も比較的長めなのだ。

 

私のアドバイスはすべて「勝つためにはこうした方がいい」という話だ。それも考え方や狙い、それに応じたポジショニングといった話ばかり。

 

口癖は「勝負を楽しみましょう!」と「連続ボレー!」だ。

 

あとはポイントを取った「嬉しい!」と、取られた時の「悔しい!」に共感しながら闘争心をあおっている。

 

そうするとどうなるか。

 

打ち方はみんなバラバラ、コテコテのスクール初中級プレーヤーのまま。しかし、白熱した打ち合いになる。ダブルスなのに1ポイントですごく長い打ち合いになることもある。

 

そして、薄々感じていた。これ、下手したら中級クラスより彼らは強いかもしれない。

 

それが、実際の結果に現れたではないか。という訳で私にとっては何より、コーチ冥利に尽きる嬉しい報告だった。

 

さて、ここまで書くと、「いやいや、なんで進級させないの?」とか、「レベル分けの基準がおかしいのでは?」というご指摘を受けそうだが、それに対する回答は以下だ。

 

「当テニススクールは、「強さ」ではなく「上手さ」でレベル分けしています」