死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

背中で伝える

「指導してくれるのはうれしいんだけど、そのコーチがそれをできないと、説得力がないと思った」

 

小4の息子がサッカーから帰ってきてそう話していました。

 

息子は地元のクラブチームとレアル・マドリード・ファンデーションのスクールの選抜クラスに所属しています。

 

レアルのスクールは私の目からも本当に質の高い指導者が多く、私も学びが多いです。

 

息子もそれを見ているせいか、地元のクラブチームのサッカーの後にはこのような感想を抱くこともあるようです。もちろん、だからと言って見下すようなことはなく、そこでも純粋にサッカーを楽しんでいます。

 

息子からこの話を聞いた時、私は指導者の立場として思い当たることがありました。

 

大学の体育会庭球部で指導をするようになって1年が経った頃です。

 

学生選手たちは自分達を鼓舞しながら学生リーグという厳しい戦いに挑んでいます。

 

私は指導者という立場から、そんな彼らにある意味で偉そうなことを言わなくてはいけません。

 

言いながら、思ったのです。

 

「偉そうに言うけど、お前はそれができるのか?あの、試合本番の極限状態で、それをやり切ってきたのか?そもそも、お前は、今、何かに挑戦しているか?お前の声は、学生たちに響くのか?」

 

そう思うようになってから、私は自分自身もアマチュア選手としての挑戦をはじめることを決意しました。

 

コロナ禍の2020年11月に立てた目標が「神奈川県選手権シングルス年齢別優勝」です。

 

それからは毎日のように、目標達成のために必要なことを考え、生活習慣を変えていきました。

 

トレーニングやカラダのメンテナンスはもちろん、食事や睡眠も意識するようになりました。

 

生きる姿勢が変わると同時に、フィジカルについて考えることが多いため、本当の意味の姿勢も変わりました。

 

それからは、以前より、学生たちの心に、少しは私の声が響くようになったように感じます。いや、まだまだだとは思っていますが。

 

また、普段生活を共にする息子にも、何かが伝わっていると信じています。

 

いや、必ず伝わります。

 

なぜなら、私も子どもの頃に父の姿を見てきたから、今それができていると感じるからです。

 

父も、毎日、自分の健康のために、家でルーティーンをこなしていました。

 

背中で伝えてくれていました。今はとても感謝しています。なかなか直接は言いづらいですが、「ありがとう」と伝えたいです。

 

そしてこれからも私は、背中で伝えることを続けていきます。

育児の成功と失敗

コーチングと育児は根本的には同じなので、こんなことを考えたりします。

 

種の繁栄という観点から、私が考える育児の成功と失敗は以下です。


子どもたちが親である自分たちよりも優れた人間になったと思えていれば成功。


子どもたちが親である自分たちよりも人として劣っていると思っているなら失敗。


これは、親がそう思っているという話なので、成功か失敗かは子どもではなく親次第、そこに育児の本質があると私は考えています。


例えば、子どもを見下す親は、もう子どもを産んだ時点で育児の失敗が決まっているということです。

 

親は子どもより偉いなどと考えてはいけないし、親は子どもよりいろいろなことがわかっていることを子どもに知らしめようなどもってのほか。マウントをとるなどもってのほかです。

 

同様に、コーチや教師、教員は、自分が上で生徒が下という上下関係を作っている時点で失格と考えています。そのような指導者から優秀な生徒は生まれません。


やるべきは、教育ではなく共育です。

 

私の経験から、子どもたちから学ぶことはたくさんあります。親は、指導者は、むしろそのことに感謝しなくてはいけません。


伝えるべきは「親に感謝しろ」ではなく「そうだね、あの人のお陰で、(私たちは)これができたんだね。感謝しなきゃね」です。


この投稿をすることで、自分自身にもそう言い聞かせています。

 

喜んで子供の踏み台になりましょう。自分たちを踏ませて、子供たちには、自分たちよりもっと高く飛んでもらいましょう。


そうなったら、絶対自分たちは自分たちを誇らしく思えると思います。


「あの人、私の子なんです!」となると思います。

意志の引き出し方

前回の投稿で、私が受けもつジュニアクラスの子どもたちの意志を感じることができてとても嬉しい、目がすごく輝いてきた、意志は今の時代を生き抜くために不可欠になってきた、という話をしました。

 

今回はその続きです。

 

私が子どもたちの意志を引き出すために、どのようなことを考えてどんなレッスンをしているか、具体例を交えて話したいと思います。

 

まず、前提の意識合わせから。

 

今回例にあげるジュニアクラスは、選手育成クラスではありません。放課後の延長でテニスをする小5〜中3までを対象としたクラスです。

 

そのスクールではジュニア中級と呼ばれています。その下にはジュニア初中級、上にはジュニア上級があり、それとは別に選手育成クラスがあるイメージです。

 

また、私は、人間の成長過程はざっくり次の2つのステップに分けることができると考えています。

 

  1. 知る・できる(習得)
  2. 考え工夫する(創造)

 

テニスで言うなら、例えばドロップショットという技術を知り、できるようになったら、それを試合で使いこなせるようになるのがひとつのゴールです。

 

試合で使いこなせるようになるためには、自分でいろいろ試して適切なタイミングなどを理解するステップが不可欠です。それが2の「考え工夫する(創造)」です。

 

ところが、多くのテニススクールは1の「知る・できる(習得)」だけをしています。

 

極端な言い方をすると、今コーチが教えていることしかやらせてもらえないのがスクールです。

 

また、このステップ1と2は繰り返されるものです。例えば、レベル1からレベル10まであるとしたら、レベル1の中にステップ1と2があり、レベル2の中にもステップ1と2があるといった具合です。

 

ゆっくりしたボールしか打ち合わないレベルでは、ネットプレーを習得し、試合でも使いこなせるようになった人も、もっと速いボールを打ち合うレベルに混ざったら、またステップ1の習得に戻るということです。

 

さて、ここからが本題です。

 

結論から言うと、意志を引き出しやすいのはこのステップ2「考え工夫する(創造)」に取り組んでいる時です。

 

ステップ1「知る・できる(習得)」でも上手くコーチングできれば意志を引き出すことはできますが、そっちの方がコーチングスキルとしては難しいというのが私の見立てです。

 

ステップ2の方が簡単に子どもたちの意志を引き出すことができます。

 

前述の通り、私の所属するスクールもほとんどのコーチがステップ1の「知る・できる(習得)」にフォーカスしたレッスンを子どもたちに提供しています。

 

それはほとんどの場合、型にはめる指導です。「ハイ!ラケット引いて!ハイ!スイング!右手の手の甲は左耳〜」というように子どもたちを言葉で操るようなケースが少なくありません。

 

こうなると、子どもたちは言われた通りにやれないと辛い思いをするため、一生懸命言われたことをやるようになります。

 

これを繰り返していると自分で考えることをしなくなる、いわゆる「思考停止」状態になります。

 

こうなると意志はどんどん薄れていくということは誰にでもわかると思います。

 

ジュニア初中級までこのような指導を受けてきた子どもたちは進級して私のクラスに入る頃にはボールは打てるけどすっかり意志の弱いプレーヤーになっています。

 

なので私は、ステップ2の「考え工夫する(創造)」にフォーカスしたレッスンをたくさん提供するようにしています。

 

ここからは「考え工夫する(創造)」について具体例をあげて説明します。

 

私のレッスンはすべて「勝負に勝つ」をゴールに定め、まず初めにそれを説明します。

 

「最後はシングルス(またはダブルス)の試合をするから、そこでどうやったら勝てるか考えながら自分なりにいろいろ試していこう。練習はラリー中心、途中にもたくさん勝負を入れるから勝ちにこだわっていこう」

 

という具合です。その日のテーマも設定しますが、それはサブテーマとして扱い、メインのテーマは毎回「勝負に勝つ」です。

 

メニューの流れは例えば、ショートラリーをして半面ストレートでラリーをしたらすぐにそのまま半面ストレートの3ポイント先取の勝負をしたりします。

 

もちろん、勝負はルールの範囲であれば何でもありです。子どもたちが創意工夫を存分に楽しめる環境を提供します。

 

また、彼らがいろいろ試してミスをしても、それにトライしたことに対する感心を示します。

 

褒めるというより、驚くリアクションの方が効果的です。

 

「おーなるほど!そこでドロップショットか。ナイスアイデア!」

 

「おぉ!今のネットプレー積極的でいいね〜」

 

さらに、この時、あえて「もっとこうしてごらん。そうすれば決められるよ」といったアドバイスをしません。

 

なぜなら、彼らはそれを自分で考えられるからです。

 

ボレーで得点したいという意志が芽生え、ネットプレーを誰に言われるでもなく自分で挑戦し、「最後のあの比較的簡単なボレーさえ上手くできていればポイントが取れていた」という手応えがあるので、彼らはもう一度挑戦します。

 

それはもう夢中モードです。

 

そしてその中で、自分の感覚でプレーを改善していき、成功体験まで自分でたどり着くことができます。

 

子どもとはそういう生き物です。

 

ここがコーチにとって一番難しいところかもしれません。我慢が必要です。子どもの性質を理解して、黙って見守ります。

 

例えば、そうやって4回失敗し、5回目で成功した時の彼らの表情はもう最高です。

 

もちろん、ここぞとばかりにコーチも声をかけます。

 

「おぉぉーー!タイキ!すげぇ!できたな!ナイスボレー!」

 

4回失敗して、成功したのがたとえ1回だけでも、レッスン後の忘れた頃に「今日はボレーでポイントが取れたからよかった」と報告してくれる子もいます。

 

これが、私がやっている、子どもたちの意志を引き出す方法です。

 

これは、テニスに限らずいろんなところで応用できます。私は育児に応用していて意志の強い息子に日々感心させられています。

 

是非、皆さんも応用してみてください。

意志のある人が好き

テニススクールでジュニアのレッスンを受け持つようになってもう数年経つのですが、子どもたちから意志を感じるようになってすごく嬉しかったので、今日はそれについて書きたいと思います。

 

例えば、テニスのドロップショット。

 

「テニスにはドロップショットという前にぽとんと落とす意地悪なショットがあるよ」

 

そう言われてやるのと、

 

「あ、相手が後ろにいるなら前にぽとんと落としてやれば相手は返せないじゃん!」

 

と自分で気づいてやるのとでは、後者の方がやっている時のワクワクが10倍大きいというのは誰の経験からも明らかだと思います。

 

その時の子供の目は、異常に輝きます。それは大人も同じだと思います。

 

そして、意志は、こういった経験の繰り返しで育ってくと私は子どもたちを見ていて確信しています。

 

自分で気づいて、考えて、やってみて、上手くいくまで挑戦して、「よし!上手くいった!やたぁ!じゃあ次はこうしてみよう!」

 

こんなふうに目をキラキラさせながらテニスをする子どもたちとの時間は、私にとって本当に最高の時間です。

 

私が意志のある人を好む理由は、彼らと一緒にいると自分もワクワクできるからです。

 

いや、もしかしたら、「生まれた時からずっと自分の周りには、何でもすぐに教えてくれる大人がいた」という人は、自分で気づいてやってみるという経験をしたことがないかもしれません。

 

というかまさに、私と初めて会うジュニアクラスの子供たちの多くがそんな感じなんです。

 

意志がほとんどない。あるいは、意志があるのに大人の目を気にしてそれを自ら封じ込めていると感じます。

 

これは本当に心配です。意志を示さない人間はロボットと同じなので、これからの時代は仕事が与えてもらえなくなります。

 

そもそも、意志のない人間が笑顔で幸せに生活していることを想像できる人はいないのではないでしょうか?

 

無表情で、死んだ魚の目をして生活している想像をするのは簡単です。

 

だから私がコーチをする時は、意志を持っているかを感じ取り、持っていなければまず意志を育てるということをやっています。

 

私がジュニアクラスで実践している意志の育て方については、また次の投稿で紹介したいと思います。

試合は相手との対話

テニス歴27年にして、最近やっとこれを理解し、できるようになりました。


それまでは、相手に意識を向けはじめるとなぜか自分のプレーの強度が落ちて納得のいくプレーにならないという状態に必ず陥っていました。

 

だから、相手ではなく自分のプレーに集中することにしていました。

 

なので試合はいつも「相手との戦い」ではなく「自分との戦い」。


納得のいくプレーをするために、全神経をボールに集中して!ここをこうして、強い気持ちで、打つ!できた!できなかった(嗚呼)という感じ。


だけど、今は違います。

 

相手と対話しながら、相手が嫌がるショットを打てるようになりました。

 

どうしてできるようになったのか。私の場合、次の3つがあったからです。

 

1つめは、自分が「納得のいくプレー」より「勝利」を求めたいることを再認識しました。

 

2つめは、自分のイメージしていた「納得のいくプレー」が必ずしも「勝てるプレー」とは限らないということを理解しました。

 

例えば、低くて速いボールでパンパンとテンポ良く打つのが納得のいくプレーだとした場合、相手はすぐにそれに慣れるので、それだけではポイントが取れなくなっていきます。

 

試合に勝つためには、相手のタイプや相手の状態に応じてショットを変える必要があるんです。

 

1セットマッチであれば勢いで押し切れることもありますが、私が目標としている大会はそれよりも長いルールのためそれだけでは勝てないことがわかりました。

 

いろんな球種、軌道、スピード、コースのボールを混ぜて、意図的に狙って打たないとポイントが取れないことを理解したことで、プレーの強度が落ちることもなくなりました。

 

3つめは、言葉です。これはとても不思議なのですが、私の場合、「対話」という言葉がピッタリきました。

 

以前、全日本選手権出場経験のある同世代のベテラン選手と試合し、マッチポイントを握ったにも関わらず逆転されるという経験をしたのですが、その試合後、彼がこんなことを言っていました。

 

「宮田さんとの試合は会話が成立するから面白かった。若い子たちとやると勝っても負けても会話にならないから面白みに欠けるよね」

 

これを聞いたときはあまり深く考えなかったのですが、最近ふとそれを思い出しました。

 

「打ち合いが、会話?」

 

「そうか!対話か!相手の言いたいこと、言われたいことがわかって初めて、言われたら嫌なことがわかるんだ!」

 

とスッと腹落ちしたんです。

 

「会話」ではピンと来なかったのに「対話」としたとたんに不思議とイメージできました。

 

その後すぐに試してみたところ大きな手応えを感じることができました。

 

もう試合では、自分のこと、技術的なことは考えません。相手と打ち合いながら対話することを楽しみます。

 

「相手はこのタイミングではこれを待ってるのか。なら、このタイミングで、このコースに、こんなボールを打つと、崩れてくれるよね?」

 

「ほらやっぱり」

 

という感じに。


生まれ変われる予感がします。


改めて今年も、結果にこだわって、目標に向かって、頑張ります!