死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

横浜市民年40才シングルス2R

1RはByeのため2Rから。30分ほど前に会場入りし、試合前の準備を開始した。

 

特にハムストリングをしっかりストレッチし、股関節と肩の可動域を広げる運動をする。いつも通り朝起きてすぐのルーティンをしっかりやっているので再確認する程度だ。

 

その後、軽く走ってから、腹圧を高め体幹を意識しながら反復横跳びのような形で一歩目でしっかり強く地面を弾く感覚を確かめる。寝ている筋肉を起こす感覚だ。

 

筋肉が寝たまま試合に入ると悲惨なことになる。このアップで筋肉から力がみなぎってくる感覚を確認する。

 

後で分かったことだが、相手は1Rを81で勝ち上がってきていたらしい。試合は見ていない。

 

個人的には、事前情報がない方が力を発揮しやすい。なぜなら、職人タイプだからだ。雑念を取払い、自分がやるべきことに集中する。

 

身体が大きいから余計なことを考えずにその身体を躍動させることに集中した方がパフォーマンスを発揮できるのだ。

 

それに加えて、テニスにおいては考えるのが下手という自負もあったりする。ただ、それは欠点とは考えていない。大きい身体を目一杯使って躍動するのが強みだ。

 

さて、会場には知ってる顔がいくつかある。その内のひとりが教えてくれた。

 

「宮田さんの相手、藤沢の年齢別とか出てますよね。結構上手いですよ」

 

もう、これを聞いただけで力みそうになったりする。いや、今回は程よい緊張感を与えてもらえた。

 

第1シードの皇帝もいる。彼とはすれ違った時に挨拶をする程度だ。彼とは順当にいけばQFで対戦する。彼に勝つためにテニスをしていると言っても過言ではない。そんな存在だが、特にたかぶることもない。

 

また、2Rに入る前に3Rの相手が確定した。名前は知っていたが顔は知らない、その彼の相手が来なかったため不戦勝となることを告げられていたのだ。勝てば彼とだ。

 

実はその彼は知り合いのコーチから「彼は某スクールのコーチだから、ひとつ目の山は彼だね」と言われていた。

 

それ以外には、皇帝と親しげに話している人が少し気になった。知らない人だが強そうだ。その彼の試合の控えになった。

 

まずその彼が、次に皇帝が、試合に入る。2人とも80で帰ってきた。次は自分の番だ。3Rの相手も皇帝もその彼も、見ている。

 

ここは、完璧なプレーで見ている相手にもプレッシャーをかけたい。しかし、80にはこだわらない。

 

「楽な相手ではない。しっかり打ち合え」

 

そう考えていた。

 

コートに入る。珍しくハードコートだった。デコターフだから好きなハードコートだが、ここでテニスをするのは初めてだった。ベースラインから後ろのフェンスまでが広い。しかも、高速道路のインターチェンジの下。

 

こういったケースでは、まず環境に慣れる必要がある。このコートを「自分のコートにする」のだ。わかりやすく言えば、試合を取り巻く環境すべてを自分の味方にするということだ。

 

そのためには、リスクを取らずにボールをよく見てじっくり打ち合うスタンスが必要だ。

 

トスに勝ってサーブを取った。サーブに自信がついてきているからだ。

 

1ポイント目、ダブルフォルト

 

思ったより緊張していることに気づく。緊張している時は、アップのサーブを練習モードのまま終わらせてしまうことが多い。今日はそうなっていた。

 

つまり、アップのサーブと1ポイント目のサーブが全然違うモードだったのだ。それに気づき、改めて気を引き締める。

 

「試合モードに切り替えろ」

 

サーブの基本を再確認し、感覚を取り戻し、確率を上げていく。

 

2ポイント目、リターンも4球目も返ってきたが打ち合いを制す。30-30までもつれたが1ゲーム目をキープする。

 

知り合いからのインプット通り、上手さがある。ミスを期待しないで、やはり自分の打点でしっかり打ち合うことを意識する。ただ、自分の1stサーブとフォアの基本球にはついてこれていない。決め急がずに自分がやるべきことをしっかりやっていればいける。

 

結果、80だった。

 

途中、1stサーブをすべて入れて、4本のフリーポイント(サーブまたは3球目でポイント奪取)でキープしたゲームもあった。アンフォースドエラーも少なく、見るものにまでプレッシャーを与えるには十分だっただろう。

 

自分の試合の控えが「宮田さんの相手、結構上手いですよ」と教えてくれた彼だった。入れ替わり側にこう言ってくれた。

 

「無駄のないテニスで惚れ惚れしました」

 

まぁ、リップサービスだが、嬉しかった。正直、今は皇帝以外には負ける気がしていない。それくらい、今の自分は強い。