死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

AI時代の人間の役割

出社のため電車で横浜に向かった。

 

横浜駅に着く。その案内をするJRの車内アナウンスを聞いてハッとし、最近なんとなく考えていたことが確信に変わったので書き留めておく。

 

車掌さんは車内アナウンスの最後にこう言ったのだ。

 

「間もなく、横浜。横浜です。(中略)ご乗車ありがとうございました。この先もどうぞ、お気をつけて」

 

とても優しい声だった。

 

実は、私の従兄弟は現在、山手線で運転士をしている。

 

今から約4年前、息子が小学2年生の頃、彼の運転する車両の運転席の後ろに貼り付いて山手線を一周したことがある。

 

彼が車両に乗り込む20分前に、その駅のホーム先頭で待ち合わせた。

 

彼は運転する電車がくるまでの短い時間で息子にお手製の手紙をプレゼントしてくれて、いろいろな説明をわかりやすくしてくれた。

 

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写真の息子の表情が示す通り、とても有意義な時間だったことを今でもよく覚えている。

 

しかも、山手線を一周する途中、近くを走る電車にトラブルが発生し、上の最後の写真に説明されている「ピピピピ」という音が運転席に鳴り響き、電車が緊急停止するというリアルなアクシデントに対応するカッコいい従兄弟の姿まで見ることができた。

 

さて、この日を迎えるために日程調整をしている時、従兄弟が私に話したことがある。

 

これは、今から4年前の話だ。

 

「ひとつ注意してほしいことがあります。電車の運転士さんに憧れないようにしてほしいんです。というのも、間もなく電車は自動運転になります。電車の運転士という仕事はなくなります」

 

「なるほど」と思った。

 

そして、つい先日、バラエティ番組の取材に応じる従兄弟の姿をテレビで観た。

 

その番組でJRの自動運転が特集されていたのだ。従兄弟は、4年以上前からそのプロジェクトの現場を担当していたようだ。

 

実際のお客さんを乗せたダイヤの上で自動運転をテストする従兄弟の姿がテレビにあった。

 

そういえば、少し前までイントネーションが不自然で機械的だった電車やバスの車内アナウンスも、最近はだいぶ人間らしい声に変わってきている。

 

そして、今話題のChatGPTの登場でいよいよテクノロジーの王とも言える「AI」が人間味を帯びた形で身近なものになってきた。

 

そのChatGPTの進化版を搭載したMicrosoft検索エンジン「Bing」も間もなく一般に普及することだろう。

 

先日、AIを実際に使い倒しているお笑い芸人で絵本作家のキングコング西野亮廣さんの活動から目が離せないという話をしたが、そういえば、彼は自身のラジオでこう話していた。

 

「テクノロジーの進歩がブルーカラーの仕事を奪うと言われてきたけど、AIに限っては、ブルーカラーよりもホワイトカラーの仕事を奪ってる。0から1を生み出すことこそ人間の仕事と信じてやまなかったけど、それはAIの得意分野だった」

 

ちなみに、これは一部の話だ。AIアートの登場で、PhotoshopIllustratorでイメージ画を描くという高等技術の価値が大きく下がったという話で、すべてがAIに置き換わるという話ではない。

 

ただ、こういう場面もあるとなるといよいよ人間がやるべきことは限られてきそうだ。

 

それは何だろうか?

 

これはAIを代表とするテクノロジーができないことを考えればいいということでもある。

 

そして今後はそこに大きな価値が生まれる。

 

そんなことを最近ぼんやりと考えていたら、それが何かを見出すためのキーワードがハッキリしてきた。

 

そのキーワードは「愛」だ。

 

また、サブキーワードは「物理的リアル」。

 

愛ということは、人と人の関わりだ。そこから生まれる感情、喜怒哀楽、嬉しいや楽しい、感動した。これらの経験が今まで以上に大きな価値となる。

 

そして、あの人が作った物理的リアルな作品にもより大きな価値が生まれると考えている。

 

つまり、これからの人間の役割、仕事は、魂を込めて「こと」を届けること。そして、魂を込めて「もの」を作ること。このふたつに集約されていくのではないか。

 

そう考えている。

 

まさに、キンコン西野さんが手がけている、エンターテイメントとクリエイティブはそれだ。

 

テニスが大好きで、美大を卒業している私の身近なところで言えば、プロのテニス選手やコーチ業は今後価値が高まり、物理的に存在するアートの価値はこれからも変わらず高いままだろう。

 

ビジネスシーンで言えば、開発と営業が最も価値のある仕事となる。今、私がやっているマーケティングの価値が営業の価値より高まったのは最近だが、それはまたひっくり返るだろう。

 

最後に、冒頭のJRの車内アナウンス。

 

あれは、愛だった。

 

「JRはそこまで考えているのかもしれない。やるな!JR!」

 

そう思わされた。

 

だから私は感動し、今こうしてこの記事を書いている。