死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

営業が不要になる時代は来るのか

先日、会社の技術部長とオフィスで立ち話したことがきっかけでいろいろ考えさせられたので頭の中を整理するために書く。

 

私の会社はインド本社で開発したソフトウェアを日本国内の企業や組織に販売し、顧客がそれらを使いこなせるよう技術的なサポートをする、いわゆる法人向けIT企業だ。

 

ZOHO(ゾーホー)という会社なのだが、電車内や駅中広告で目にして知っているという方もいるかもしれない。

 

ここで機密情報を漏らすことはないので実名で宣伝をしておく。本社の技術力はとても高くどんどん進化していくとても良い会社だ。

 

さて、ゾーホージャパンの技術部は顧客がソフトウェアを使いこなすためのサポートを担う部門で会社の中でもっとも人数の多い部門でもある。

 

ちなみに私は、数あるラインナップの中のひとつ、Site24x7というWebサービスの営業とマーケティングを兼務している。技術部に所属したことはない。

 

話すきっかけは、部長が南インドのチェンナイにある本社に出張すると聞いたからだ。

 

私「◯◯さん、来週からインドなんですね。どれくらい滞在するんですか?」

 

久しぶりにオフィスで声をかけた。

 

部長「2週間です」

 

出張の話を少しした後、せっかくだからと私は以前から気になっていた疑問を部長にぶつけてみた。

 

私「以前から気になっていたことを聞いてもいいですか?」

 

部長「はい、なんでしょう」

 

私「技術部は今、顧客のサポート業務を本社のインド人社員に任せて、マニュアルの翻訳などの情報整備に注力していますよね。けど、それって近い将来AIに置き換わる仕事ですよね。AIに置き換わらない仕事は人と人の対話の部分だと思ってるんだけど、それはインド人社員に任せている。つまり、日本人社員には近い将来不要となる仕事をさせているように私の目には映っているのですが、みんなそれでいいんですか?部門としてのビジョンなどがあれば聞きたいと思ってたんです」

 

部長「あー、そうですよね。私も近い将来なくなると思っていますよ。そうですね、技術部が目指しているのは、サポートが不要になって、ユーザーが使い方でわからないことが出てきても、ユーザー自身が少し調べれば自己解決できる世界です。ユーザーはそれを望んでいますよね?」

 

私「確かに。それは間違いないですね」

 

部長「なので、人が対応する回数は減らせた方がいい。マニュアルの翻訳はそのためにやっているということを技術部のメンバーは理解してくれていると思っています。ただの翻訳業務と考えていたらつまらない仕事になってしまいますが、その世界を作ることが目的となっていればきっと面白いですよね。そのためのアイデアを日々出し合って改善を目指しています」

 

私「なるほどぉ!けど、その業務がAIに置き換わることには変わりませんよね」

 

部長「はい、それはそうですね。それでもAIを恐れたりはしていません。少なくても私はですが。AIを使うことで翻訳結果がユーザーフレンドリーになって作業も効率化できるなら使った方がいいですし、サポート対応自体をチャットボットのようなAIに置き換えた方がユーザーのためになるならそうした方がいいと考えています。それによって技術部の人数を減らした方が会社にとって有益となれば減らした方がいい。それは前提として、今いるメンバーは、サポートのいらない世界をどうやって作っていくかを日々考えて、それを推し進めていくことに集中しています」

 

私「なるほど、理解できました。そう言われてみると営業も、わざわざ人に問い合わせなくても知りたいことが知れて、気軽に試せて、よければ自分でササッと購入できた方がいいですね。そこまで考えていませんでした」

 

部長「そうですよね。『この問題を解決したい』と話しかけたら適切なソフトウェアを提示してくれて、『試してみたい』と言えば試せて、『この機能とこの機能でこれとこれをやって』と言うだけでやってくれて、『これください』と言えば購入できる世界が来るかもしれません。楽しみですよね。私たちが生きている間に来るかはわかりませんが」

 

こんな風に会話は終わった。

 

なるほど、部長の言うとおりかもしれない。営業職も兼務したことで、AI時代はなおさら人と人との心の通ったコミュニケーションこそが重要になると強く考えてきた自分は肩透かしを食う格好となった。

 

確かに、私が担当するWebサービスも、営業対応することなくクレジットカードで勝手に買ってくれるお客様もいる。

 

営業のいらない世界はもうそこまで来ているのかもしれない。

 

が、その後いろいろ考えて確信した。営業部がそれを目指すことはない。

 

なぜなら、営業という仕事は、人的対応が大前提だからだ。人的対応があるから存在する部門なのだ。

 

逆に言うと、人的対応がなくなれば消える部門ということでもある。

 

そして気づいた。

 

マーケティングと技術は人的対応を減らすことを目指す部門とも言える。間に挟まれた営業は、減らせない人的対応を担う部門とも言える。

 

もちろん、営業は仕方なく対応しているわけではない。自分の存在価値はここにあると言わんばかりに喜んで対応している。少なくとも私はそうだ。

 

話を戻す。

 

前述の、クレジットカードで勝手に買ってくれるお客様は、マーケティングと技術(テクノロジー)が生み出した結果だ。

 

つまり、営業はマーケティングと技術の仕事によって消えてなくなるかもしれないのだ。

 

一方で、人的対応を強みにする経営戦略もあってしかるべきだろう。

 

安さと早さを重視したファーストフード店タイプではなく、おもてなしと体験を重視する料亭タイプ。

 

後者であれば、営業はなくならない。

 

ZOHOはどっちだろうか。

 

ZOHOのソフトウェアは他社と比較すると低価格なため、価格帯からいったら前者だろう。

 

それでも、個人的には、その価格帯のまま後者を目指してほしいと思っている。なぜなら、心の通ったコミュニケーションがあった方が人間らしくて好きだからだ。

 

しかし、ZOHOはテックカンパニーだ。その可能性は低いかもしれない。まぁ、その時はその時だ。