死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

ビジネス書で泣いたのは初めてだ

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結論から書く。この本、ビジネス書のくせに、最後の最後で泣ける。

 

いや、それは、私だけかもしれないが。私は行きつけのカフェでこれを読了し、涙をこらえるはめになった。

 

この先は、ネタバレが含まれる。泣ける理由を知りたくない人はこの記事を今すぐ閉じて本書を買うことをおすすめる。

 

 

今回この本を本屋で手に取った理由は、著者の安達裕哉さんが立ち上げたWebメディア「Books&Apps」が好きで以前からよく読んでいたからだ。

 

安達さんご自身も記事を書かれており、これまでたくさんの気づきを与えてくれた。

 

このメディアは複数のライターの寄稿で成り立っていて、安達さん以外にもとても魅力的な文章で気づきを与えてくれる方がいる。

 

私のおすすめは安達さんの記事しんざきさんの記事だ。

 

もうだいぶ昔から読んでいるため、私は安達さんの人となりをよく知った気になっている。

 

以前、たしか新R25の特集記事で顔出しもされていて「こんなお顔の方だったんだ。うん、けどなんとなくイメージとピッタリきてる」とか勝手に思っていた。

 

私が勝手に作り出した安達さんのイメージはこうだ。

 

  • 頭がいい
  • サバサバしてる
  • 根は冷たい
  • いつも冷静で感情の起伏が少ない
  • だから基本笑顔も少ない
  • 仕事で必要な笑顔はいつでも出せるけどそれも必要最低限
  • 仕事には厳しいが他人には厳しくない
  • つまり、できない人は見切る
  • けど無駄にはせず適材適所の仕事を与える
  • どちらかというと1人でいる方が好き
  • 1人でいるときはいつも本を読んでる
  • 愛想がなくて少し近寄りがたい
  • 何より、仕事ができる

 

ビジネス版「流川楓」だ。

 

もちろん、ネット上の安達さんは、ご本人のほんの一部で、むしろキャラは意図的に設定されているとも思っているが。

 

今安達さんの経営されているティネクト株式会社は本人も以前どこかに書いていたように大成功している会社とはいえないようなので、「きっと苦労も多いのだろうな」と勝手に想像したりもしていた。

 

「こういう人はバカ」といった表現が記事や本書にも出てくるので、一緒に働くメンバーの中にもそう思わざるを得ない人がいるのではないかと想像したりもした。

 

ティネクト社の運営する無料のマーケティングセミナーにも参加したことがある。コロナ前のリアル対面のセミナーも、コロナ禍のオンラインセミナーも。

 

いずれも、安達さんご本人は登場しないものだったが、「頭がよくて仕事のできる安達さんと一緒に働いている方々はこんな感じの方々なんだ。売上つくれないと会社も回らないし、安達さんの無言のプレッシャーとか感じてたりするんだろうな」となぜか彼らに同情したのを覚えている。

 

何が言いたいかというと、私にとって安達さんは、見たことも会ったこともないが、とても尊敬していて、けど仕事では厳しくて少しこわい、メンターのような存在なのだ。私より若いけど。

 

そしてこの本だ。

 

期待通り、Books&Appsの記事で見てきた通りの、頭のいいいつもの安達さんがこの本にはいた。

 

頭のいい人を演じるための表面的なテクニック本ではない。テクニックにも触れているが、それ以上に、本質的なことがわかっていない人にもその本質を理解できるよう重要なことがわかりやすく書かれている。

 

例えば、103ページの次の一文。今の私にはここが一番刺さった。

 

ビジネスもプライベートも、だれかと長期的な関係を築くには、信頼感が不可欠です。社会人になって求められる頭のよさは、信頼を伴う頭のよさなのです。

 

これを読んだ時、思い当たる節がありまくった。

 

ちょうど仕事で、マーケティング担当だった私は「お客様からの信頼獲得こそが新規売上獲得の肝だ!」と考えるようになり、今年の4月から営業も兼務していたのだ。

 

そして、今年の新規売上は前年の1.5倍〜2倍になるペースで成長させることができており手応えを感じている。もちろん、コロナ禍からの景気のリバウンド効果もあるだろうが。

 

こういった本質を踏まえた上で、私の知らないテクニックの話が書かれていたので大変勉強になった。

 

もうひとつ印象に残っている点を紹介する。

 

安達さんはこの本の中でご自身の娘さんや奥さまを会話の例に登場させている。

 

私は「サバサバしたビジネスマンにも夫や父の時はこんな一面があるんだな」とある意味で微笑ましく感じていた。

 

そのひとつが、出張で飛行機に乗る直前に奥さまから娘さんの七五三の着物選びで悩んでいると電話がかかってきた時の会話だ。

 

私は、その会話の安達さんの

 

"子供たちの好み"ってコロコロ変わるんじゃないの?優先度低くない?

 

で吹いた。奥さまもすっかり納得してしまっているではないか。

 

いやこんな説明では伝わらないが、いずれにしても、家族をとても大切にしていることが伝わってくるのだ。

 

普通、多くのビジネスマンは、「今は相談に乗れない。後で掛け直す」と言って電話を切るか、そもそも電話に出ないかだろう。

 

私は、サバサバしたビジネスマンと家族思いの夫父とのギャップがとても好きでこれまで以上に安達さんのファンになっていた。

 

そんなこんなでこの本に夢中になっていたら、買った翌日には「おわりに」を読んでいた。

 

ここでだ。

 

最後の最後の見開き2ページを開いた、その一段落目に、まったく想像していなかったエピソードが書かれていたのだ。

 

実は15年ほど前に、私は前の妻を病気で亡くしています。

 

「えッ?!」

 

私はひとりカフェでそう声に出していた。

 

あんなに微笑ましい家族との時間を持つ安達さんの過去には、とても想像しきれない、こんな悲しい過去があったのだ。

 

そして、こう続きます。

 

当時コンサルタントとして最も忙しかった時期で、コミュニケーションを密にとっていたとは言い難い状況でした。それは今でも後悔していることのひとつです。

 

本当に頭のいい人とは、大切な人を大切にできる人だと思います。

 

経営者でもそういう人こそ、周りから慕われていました。

 

大切な人を大切にするために、丁寧で知的なコミュニケーションを心がけてください。

 

さらに、この後に、これまで安達さんがお世話になった仕事関係者への感謝の言葉が続くのだ。

 

それは、人を見下すような、上で述べた私の勝手な想像とは真逆の姿だった。

 

そして最後の一文がこれだったのだ。

 

最後に妻の美保、ありがとう。家族の心配なしに執筆できたのは、貴方のおかげです。

 

2023年3月 安達裕哉

 

今、改めてこれを読み、今度は涙がこぼれた。

 

私も安達さんに見習い、丁寧で知的なコミュニケーションを心がける。本当に大切な人を大切にする。それは、ビジネスでもプライベートでも。

 

最後に。

 

安達さん、いつもたくさんの気づきをありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。