結論から書く。
40歳からでも強くなれる。
ただし、テニスのシングルスのように、高い運動強度を求められるスポーツで強くなるためには次の割り切りが必要だ。
「ほんとうに少しずつ、ゆっくりと積み上げていくしかない」
焦ってはいけない。長い目で見ることがとても重要ということだ。
なぜなら、短期的な成長を目指すと怪我をするから。
怪我や病気をするとこれまでコツコツと積み上げてきたものがあっという間に失われる。
ベテラン選手にとっての努力には、休むことや、やりたい気持ちをおさえ我慢することも含まれるということだ。
ただし、たとえ怪我や病気をしても、焦らず、またコツコツ積み上げれば、3〜6ヶ月後には元に戻せるから失望する必要はない。もちろん、怪我や病気によっては1年かかることもあるだろう。
これは、直近2年間で私が実際に経験したことだから間違いない。私は今43才だ。
重要なことは、自分にとって無理なく確実に成長できる最適な活動量を導き出し、それを止めることなく続けることだ。
私は自らの失敗でこれを確信した。
そして今、成長スピードを最速化できていると感じている。日々、成長を感じることができている。
そのスピードは、当初想像していたよりも遅かったが、とても、順調だ。
*
「成長スピードを最速化して、誰よりも早く強くなる!」
2年前、私はそう考えていた。
選手経験は限定的だったが、コーチ経験があった私は、技術よりフィジカルを向上させた方が強くなれることは明らかだった。だから毎日、坂道ダッシュなどで体を追い込んでいた。
2020年11月。
コロナ禍で仕事がフルリモートとなり、自らの意志で動かないと家から一歩も出ない生活を強いられる中、決意したことがある。
神奈川県テニス選手権大会シングルス40才以上で優勝する。
そして、本気でこれを目指す活動を始めたのだ。
それから、毎日トレーニングし、オンコートでは試合をして試合勘やテニスIQを鍛えるという日々が始まる。
坂道ダッシュと階段ダッシュではタイムを計り、自己ベストを更新するたびに大きな喜びを感じていた。
こうやってはじめはどんどん体が強くなっていった。それはテニスのパフォーマンスにもすぐに現れ、着実にレベルを上げていった。
ところが、「もっと、もっと」となり歯止めが効かなくなっていく。
気づくと疲れが残ったままという日が多くなっていた。
それでも「体をいじめ抜けばそれだけ強くなる」と考え追い込んだ。
さらに、活動をはじめてからちょうど一年が経つ頃、坂道ダッシュのやりすぎで左足の内転筋に違和感が出はじめる。
それでも「動けるから大丈夫」と見て見ぬふりをしていた。
理由は成長スピードを落としたくなかったからだ。盲目的となり、やればやっただけ強くなれると信じていたのだ。
2022年1月。
案の定、左足内転筋が悲鳴を上げる。強い相手とのマッチ中にグキッとやったのだ。
しかも、目標の県選手権大会の1ヶ月前という最悪のタイミング。
この頃の活動量は明らかに自分のキャパを超えていた。
お世話になっている理学療法士の先生にも「そりゃ怪我しますよ」と怒られた。
それまで急成長してきたが、ここからマイナス成長期に突入する。そのまま試合本番を迎え、準決勝敗退となる。
大会期間中も患部にははっきりと違和感があり、また再発するかもしれないという不安を抱えたままの挑戦だった。
その割にはよくやったとも言えるが、プロだったら出場を見送るような状態だったため褒められたものではない。
その代償か、この内転筋の違和感が長引く。
怪我を克服するために理学療法士の先生から学んだ柔軟と筋トレは朝の1時間、今も毎日続けている。
怪我発生から10ヶ月後の2022年11月。
その違和感もかなり小さくなり、怪我をする前のレベルにようやく戻ってきた。
が、今度は新型コロナに感染。1週間寝込んだ。
復帰後、鏡に映る自分の体がひと回り細くなっていることに気づき体重計に乗って愕然とした。
4kg減っていたのだ。この4kgがすべて筋肉であることは間違いなかった。
2年間努力を続けて獲得した7kgの筋肉の半分以上をわずか1週間で失ったのだ。
それから2ヶ月が経った今。
その4kgの筋肉をほぼ取り戻し、内転筋の違和感も限りなくゼロに近づいている。
テニスも怪我をする前より良い。自分史上最強と言える。
ここまでの道のりは以下だ。
1年目は、10歩進んだ。
2年目は、5歩退がって5歩進み、2歩退がって3歩進んだ。
つまり、2年目は、1歩しか進めていない。
1年で10歩進もうとしてはいけないのだ。1年で確実に5歩進むことが重要ということだ。
これまでの経験があるから、それをどうすれば実現できるか、今はわかっている。
と言い切れるようになるまでに、実はもうひとつ大きな経験をしている。
それは先週の土曜日の2日連続で運動なしからのテニスだ。
その日はめちゃくちゃ体が動いた。それが先日書いた、全日本ベテラン選手とのサシ練ガチマッチだ。
ただ、ここでいう大きな経験というのは、2日連続で運動をしなかったことだ。
普段、月金を運動オフ日としている。そのため、2日連続で運動しないというのは稀なことだ。
いつも水は軽めの運動とし、火木土日はテニスがなければ走り込みなどのトレーニングで比較的追い込むようにしている。
しかし先日は、木に運動をしなかった。その理由は水に気が向いたため走り込みでかなり体を追い込んだからだ。
木を休養にあてることとし、金を運動日にしようと考えた。
しかし、金になっても水の走り込みの疲れが残っていたため、悩んだ結果、2日連続で休むことにした。
この時、体は疲れていたが心ではテニスをしたくて仕方なかった。珍しくそれを我慢したのだ。
2日連続で運動をしていないことにサボったような気持ちさえ芽生えていた。
しかしだ、土の早朝、全日本ベテラン選手とのテニスで体が良く動くではないか!
その良いプレーイメージを脳が記憶し、体が覚えたのは言うまでもない。
この経験は大きかった。
ここからの学びは「2日連続で休むべき」ということではない。
「疲れが残ったまま運動をする日は減らすべき」ということだ。そのためには2日連続で休むことも必要ということだ。
こうすることで、怪我をすることなく、少しずつ、しかし確実に、成長していける。
さあ、ここからだ。
怪我も病気もせずに、焦らず、ゆっくり、コツコツと。今年は10歩ではなく、確実に5歩進む。
1年後の自分が楽しみでならない。