死ぬとき笑う

だから、自分に正直に、自分のために。

最低の親になって学んだこと

私の人生最大の汚点について、恥を承知で書きたいと思います。

 

この話は、小さなお子さんを持つすべてのお父さんに伝えたいです。

 

私と同じ過ちを犯さないことを心から願っています。「馬鹿な親」とはまさにこのことです。

 

今回はしくじり先生になったつもりで書きます。

 

私は、近所の公園で、まだ6才の息子に向かって怒鳴り散らし、息子が大好きだったテニスを「もうやめる」と言わせてしまったのです。

 

今回は、それが馬鹿な行為とわかっていたのになぜそうなってしまったのか、また、その失敗から学んだ「育児で大切なこと」についても書きたいと思います。

 

私は以前テニスコーチを本業としていたほどテニスが大好きで、もし可能性があるなら、息子にもテニスを好きになってもらいたいと思い、日々息子と接していました。

 

その甲斐あって、息子もテニスが大好きになり、メキメキと上達し、オレンジボールの小さな試合で3回も優勝するほどになっていたんです。

 

息子がラケットをはじめて握ったのは3才になる少し前からです。

 

それ以前から私は、ネットや書籍から育児やコーチングに関する様々なことを学び、自分の経験からそれらをアレンジ、実践し、いろいろな場面で確かな手応えを感じていました。

 

息子が6才になるまでは、自分を最高の親と自負していたほどです。それから数ヶ月で天から地に落ちるとも知らずに。

 

息子に「もうやめる」と言わせてしまった時、私は最高の親から最低の親に成り下がったのだと理解し、情けなく、泣きました。

 

その時のショックは今もこれからも忘れることはありません。

 

家族会議が開かれ、当分の間は私は息子と関わらないことを決めたほど、私と息子の関係は悪化したのです。

 

もう時間しか解決できない。元通りの仲の良い親子関係に戻る方法はそれしかない。そう判断しました。

 

「怒鳴り散らすなど愚の骨頂」

 

そんなことは十分に理解していたつもりだったのに、なぜそうなってしまったのか。振り返ってみたいと思います。

 

前述した3回目の優勝の後、私は息子に「グリーンボールの試合に挑戦してみないか」と提案しました。

 

これは息子より年上の相手が増える背伸びした挑戦なので当然優勝からは遠ざかります。

 

それでも息子は懸命に戦っていました。その姿は今でもよく覚えています。

 

その姿を見れば、以前であれば勝ち負けに関係なくとても褒めていたはずです。

 

しかし、試合後に私が息子にかける言葉は以前より厳しくなっていきました。

 

「ここで勝ち越せるようになるには、優勝するようになるには、より高い意識、より強い意志が必要だ」

 

そう考えていました。

 

実はこの頃から、私はラファエル・ナダルの叔父でコーチのトニー・ナダルの本「ナダルノート」を読み始めていました。

 

トニー・ナダルといえば、ナダルに対しては理不尽ともいえる厳しい言葉を言い放つ指導者です。

 

その影響を私はもろに受け始めていたのです。それが息子がテニスをやめる3ヶ月ほど前のことです。

 

これまでの自分が大切にしてきた指導方針をわかりやすく言えば「褒めて伸ばすタイプ」です。トニー・ナダルの指導方針はその真逆です。

 

その影響か、私は徐々に感情のコントロールができなくなっていきました。

 

息子は、パパとの楽しいテニスの時間が、少しづつ辛い時間、嫌な思いをする時間と感じていたはずです。

 

テニスをする息子から、笑顔がなくなりました。

 

そのことに気づいて元の指導方針に戻すといった冷静な判断もその時の私にはできなくなっていました。

 

そして、最低の親となりました。

 

どこで間違えたのか。今はこれについての結論が出ています。ナダルノートを読んだからではありません。

 

間違いだったのは、グリーンボールの試合に挑戦させるタイミングです。

 

実は、オレンジボールの試合で2回目の優勝をした後にも私は息子に「次はグリーンボールの試合に挑戦してみないか」と提案していました。その時、息子はこう言っていたのです。

 

「いや、俺はまだオレンジボールの試合に出る。5回くらい優勝してから考える」

 

息子がそう言うのにはしっかりとした理由があったのです。

 

「グリーンボールの試合に出ても今は勝てないことはわかってる。勝てないことが続くとテニスが楽しくなくなる可能性がある。グリーンボールの試合で勝てるようになるためには、もっとオレンジボールの試合で納得のいくプレーをできるようになって自信をつける必要がある。自分にとっては、グリーンボールの試合に挑戦するのはその後の方がいい」

 

これは後で聞いた話です。息子はここまでしっかり考えてグリーンボールの試合はまだ出ないと私に伝えたのです。

 

これが息子の判断であり、自分にとって最適なペースだったんです。

 

それなのに私は、3回目の優勝で有頂天になり、「やっぱりグリーンボールの試合に挑戦した方がいいよ」と息子のペースから私のペースに引きずり込んでしまったのです。

 

そしてこれが、私がこの失敗から学んだ、育児でもっとも大切なことのひとつです。

 

「親が夢見るペースではなく、子どものペースで積み上げていく。これを守るのが、一番の近道で、家族の幸せはその先にある」

 

人間という生き物にとっては、自分の足で、自分のペースで、自分の選んだ道を進むことこそが大切なのだと。

 

人は他人をコントロールできないし、してはいけない。自分のことに、自分の人生に、集中すればいいんだと。

 

育児とは、子どもがいろいろ経験できる環境を提供し、子どもの意志が芽生えたらその要望に応えることなのだと。

 

私は学びました。

 

今は、私と息子との関係は元に戻り、息子は勉強とサッカーが大好きな少年になり、日々ものスゴいスピードで成長しています。

 

そして私は、息子に負けないくらいテニスに打ち込んでいます。

 

余談ですが、息子は両親とは異なり、自分のことも仲間のこともチームのことも大切にできるタイプなので、テニスよりもサッカーの方が向いていました。

 

結果論ですが、今はそれでよかったと、心から思えています。